お米は生のままでは、澱粉質が消化分解しにくいので、40分~1時間程蒸して糊化澱粉にしてやります。 蒸し器は甑(こしき)といいます。
下部の釜で生じた蒸気は甑の底の穴から甑の中に入り米の層を上昇して蒸しが行われます。
現在、さまざまな連続蒸米機が考案され、大きな製造場で使用されていますが、中小の製造場ではいまでも従来の甑を使っているところが残っています。
蒸しの目的は、適度に水を吸わせた生米を、蒸気で加熱することによって、米の生デンプンをα化(生のデンプンに水を加えて加熱するとデンプンは 膨潤して糊化し酵素に分解されやすくなる変化)し、麹菌の生産する糖化酵素の作用を受けやすくするためです。
よい蒸米とは、さばけがよくて外硬内軟なものです。 つまり、完全にα化され、適度のかたさを保ち、表面がべたつかないものを指します。 蒸米の硬軟は、以後の製麹管理と醪中の米の溶解に大きな影響を与えるので、大変重要な行程です。
■甑(こしき)昔から、白米を蒸す装置として、甑という杉材でつくった桶を使用してきました。
底部中央に釜で発生した蒸気を取り入れる甑穴があり、その上に蒸気を分散させるコマを置き、浸漬米をはりこみます。最近は、口径を大きくして、蒸米の取り出しに都合のよい深さにした、アルミニウムやステンレス製のものが多く使用されるようになりました。
金属製甑は、熱伝効果から、木製に比べ無い壁に水滴が生じ、内壁部分にやわらかい蒸米(甑肌といいます)ができるので外壁の保温をしなければなりません。
甑内の米置き順序は、下から留添え、中添え、初添えの掛米、酒母米、麹米とします。 蒸し時間は蒸気が米層を抜けてから30~60分間で、予定時間が経過した後、蒸気抜きをして蒸米を取り出します。
■自動連続蒸米機蒸気層の中をベルトコンベア方式によって、米を連続的に移動させて蒸す横型連続蒸米機と、円筒の上部から連続的に米を入れ、下部から蒸気を吹き込んで蒸し、 蒸米を下から落とす竪型連続蒸米機があります。
蒸米は掛米としてそのまま仕込みに使用される区分と、麹に使用される区分の二つに分けられます。
掛米はさらに酒母、初添え、中添え、留添えと区分され、それぞれ仕込み温度が異なるため、使用区分に適した温度まで冷却しなければなりません。
この工程の中で、空気を蒸米層に通しファンで強制吸引し、蒸米から蒸発潜熱を奪うことにより 冷却し取り出すことが広く行われています。冷却温度は米層の厚さと排風量と、取出し用 コンベアの運転速度によって調整するようになっています。
「甑による蒸米つくり」 (写真提供:出羽桜)次の行程へ進む