酒母は文字どおりお酒のお母さんにあたり、「もと」ともいいます。 (「もと」も漢字で書きたいところですが、常用漢字ではないようですね。 「酉元」という字です。)
酒母はお酒を醗酵するための優良な酵母を純粋に大量培養したもので雑菌等が繁殖しないように大量の乳酸を含んでいます。
酒母は酒母タンクの中に水、麹、蒸米、酵母を入れてつくられます。 酒母を造る方法は2通りあります。 昔ながらの生もと(きもと)法と速醸もと法です。
生もとは自然に乳酸醗酵させてから酵母を増殖させます。 (山廃もともこの中に含まれます) 速醸もとはあらかじめ乳酸を添加して酵母を育成します。
酒母が完成するまで、速醸は2週間、生もとは30日以上かかります。 一般に1g(グラム)中に2億以上の酵母がいるといわれます。
「酒母室」(写真提供:上喜元)「生もと酒母」では、麹と蒸米と水を混和し、自然の乳酸菌の働きを活用して、雑菌の侵入を防ぎながら清酒酵母を純粋培養します。 「山廃酒母」は、この生もと造りにおいて、山卸しという作業を廃止して造られた酒母のことをいいます。(山卸しとは、麹と蒸米と水を混ぜ、すりつぶす作業のことです)
現在では、この山卸し作業の煩雑さを省くため、「山廃酒母」が主流を占めるようになっております。
生もと系酒母のアミノ酸度は、速醸系酒母の2~3倍多いのが普通であります。 両者の違いは仕込みの条件、すなわち速醸もとは乳酸酸性(pH 4程度)で出発するのに 対して、生もとは最初は中性で、製造経過の中で次第に酸性化する点にあります。
清酒中には19種類ものアミノ酸が定量されており、これらのアミノ酸は旨味・酸味・苦味 などをもっています。 アミノ酸が多い酒はゴク味が豊かでありますが、多すぎれば雑味が多くなり、 少なければ味がうすくなります。
アミノ酸の多い酒は熟しやすく、貯蔵中の品質劣化も早く進むという傾向があり、 アミノ酸は清酒の着色の原因ともなり、くどい味のため嫌われるという面もあるため、 最近ではアミノ酸の少ない清酒が好まれる傾向にあると言えましょう。
「生もと」やその簡便法である「山廃酒母」の酒は、数種の乳酸菌による乳酸発酵や、 酵母による発酵など複雑な発酵による生産物、特に香りに複雑に生ずる成分が生まれ、 いわゆる重厚な香味、自己主張のある酒質になると言われております。
高温糖化酒母は麹の糖化酵素の糖化適温である56℃前後で、5~7時間糖化を行い、 酵母の培養基をすみやかにつくってしまい、乳酸を残りの汲水と共に添加した後、 急冷して25℃前後にして、培養優良酵母を多量に添加する方式です。
速醸酒母と違い麹や汲水中の野性酵母の大部分は糖化の際の高温により死滅するので、 比較的容易に添加酵母を純粋に培養できます。
栄光冨士のお酒は 全製品この高温糖化酒母で醸されています。
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