今日はこれといって変わった仕事がありませんでした。いつものルーティンの
仕事です。ではここでそのルーティンの仕事の内容をおさらいしてみます。
- AM6:00 起床
麹室で切り返し(布に包まれて塊になっている麹を手と切り返し機で ほぐす作業)を行い前日から寝ている麹を出麹([でこうじ]出来上がった
麹を乾燥させる枯らし場でひろげる作業)を行います。 枯らし場には畳一枚分くらいのすのこのようなものがあり、そのうえに 麻布をしき麹を広げます。
砂丘の風紋のように楕円を描いて広げます。
これは表面積を大きくするためだと思われます。
- AM7:00 朝御飯
お弁当が来ます。朝ぶろを入るのでしたらこの時間帯です。
- AM8:00 作業開始
まず、櫂入れ(醪のタンクに櫂棒を入れてかき混ぜる作業)です。 櫂入れと同時に醪の温度や各種データーをとるためにサンプルを取ります。
この時期は暖かいために暖気樽に氷を入れて醪を冷やします。 これもかなりの氷を必要とします。 使用した櫂棒は一度使ったらすべて洗い、熱湯をかけて殺菌します。これが終わると蒸米が出来上がっていますので、放冷機から放冷 された米が出てきます。甑の中には上から酒母米・添麹・仲麹・ 留麹・掛け米といった具合に御米が入っています。
酒母の仕込みがないときは麹米が出てきますので、それを麹室に かついで運びます。(引き込み作業と呼ばれます)次は掛け米が出てきますので私は放冷機の隣にたってそれを手で さらに細かく砕きます。このときに手の水分や油分がとんでしまい かなり手が荒れてしまいます。同じように放冷機で細かく砕く
作業をしている蔵元は酒田の上喜元でした。
何もしないで そのまま使う蔵元もあります。 掛け米はエアーシューターですが何年か前までは掛け米すら
担いでいたとか。掛け米が入るタンクでは蔵人が櫂棒でかき混ぜていますが、米が まだ溶けていないので全身の力で櫂棒を動かさないと抜くことも 押すこともできません。これはかなりきつい作業です。
放冷機が終わると細かいところまで手を入れて清掃作業を行います。 とにかく掃除をこまめに行います。本当に清潔な蔵です。
- AM10:00 休憩
その日の気温や湿度で放冷機に時間がかかったりする場合があります。 早い日は10時には一服できます。
- AM11:00 室仕事
引き込んだ麹米を広げて種付けを行います。蒸し上がった蒸米に すぐに麹菌を振らないのは蒸しを均等にするためなのだそうです。 麹室に引き込んだ米を一度布で包んでこの時間になるまで待つ
わけです。上から麹を振りかけますが、大きな布で米全体を 包んで麹を振ります。
これは麹菌が飛び散らないための配慮です。 この作業が終わるとまた麹室の掃除です。
一度でも作業が終わると細かいところまで掃除を行います。
- AM12:00 昼食
- PM1:00 作業開始
午前中の慌ただしさと異なり、午後からは比較的ゆっくりと 作業がすすめられます。まず明日の蒸しのための準備が行われます。 洗米された米を甑の中に敷いていく作業です。
米はそれぞれ仕込みの
違いで層のようになっていると前回説明しましたが、間を布で 仕切りながら米を入れていきます。
搾りを行っているときは、槽がけ(上槽ともいい、醪を搾ってお酒と 粕に分離する作業です)を行います。タンクからホースで圧送されて くる醪を布袋に入れて積んで行きます。槽口からお酒が出てきます。
(いわゆる「あらばしり」ですね)一度だけ飲む機会がありましたが ガスが抜けていないのでぴりぴりします。
昨年も書きましたが、山形工場の槽は2つあり一度搾ったものを もう一度積み替えてしぼります。この積み替えの作業も結構きつい です。最初の年はあんなにたくさん槽の奥まで袋があるとは知らず
後半は結構ばてていましたが、3年目になるとパワーをセーブしながら 作業するので楽です。:-)
ただ、この作業もアルコールを直接さわり続けるせいか、手が
荒れやすいです。
でも、大吟醸の仕込みのときは酒母、麹、掛、全ての米を全部人手で 洗っています。その後の蔵人の手を見ると本当にひどい状態で ひび割れたりあかぎれで血が滲んでいることも珍しくありません。
それくらいのことをして出品酒を醸しています。
出来あがった麹は掛け米を朝入れる前に前日の夕方のうちに 醪のタンクに入れます。それ以外に掃除や雑用を行います。
- PM5:00 終了
最後にミーティングを行い、切り返しの時間や造りの注意点などを お互いに連絡しあい終わりになります。 この後は泊まりの方二人とご飯を食べて、PM7:00または8:00の
切り返しと12:00近辺の手入れを行い朝になります。
おおまかに作業の流れを整理するとこうなります。もちろんこれは研修生 である私の作業であって杜氏や蔵人の方達はもっと専門的な作業を行っています。
今年は最終日に放冷機ではなく釜掘り(甑に入っている蒸し米を掘り返して 放冷機のベルトコンベアに乗せる作業)を行いました。
見た目以上にずっときつく、かなりの力仕事です。蒸米からの蒸気と
力仕事で汗だくになります。でも一度やってみたかった仕事なので ちょっと嬉しかったです。
今年は昨年と違い、大吟醸の作業もほとんど終わり蔵の中の空気が穏やか というか和んでいました。やはり大吟醸が入っているときはみんな神経質 というかぴりぴりしています。
大吟醸が入っているときは泊まりの人も3人になりますし、ほとんど寝たか 寝ないかのうちに麹の様子を繰り返し繰り返しみたりしますので当然です。
今年の研修で感じたことは、この出羽桜山形工場には私の初心があるという ことです。酒造りの勉強、人脈形成、いろいろなことを体験するという 目的ももちろんありますが、この工場から帰ってくると「今年もがんばろう」
「また来年も来れるようにがんばろう」という気になります。
それは酒を造っている現場の方達の努力や人柄に実際に触れているからかも しれません。
来年も時間をとれればまたお邪魔したいと思っています。 10名ほどで造りを行っている工場ですから、雑用はたくさんあります。 来年も今年以上に蔵の方達の役に立つような研修を出来れば
そしてまたいろいろなことを教えて頂ければと思っています。