上喜元 研修日記 1999年2月23日〜25日

2/23から2/25まで上喜元に造りの勉強に行ってきました。 例年ですと出羽桜山形工場に1週間ほど泊まりで行くのですが、今年は 2月3月が何かと忙しくて時間が取れず、近くの蔵元にお世話になることに しました。

2/20は蔵見学で上喜元を訪れたのですが、見学内容は素晴らしいものと なりました。その際、造り仕舞い(今年の仕込みが終わることです)が
3/2だから造りに来るなら早く来た方が良いと教えられ、早速行くことに しました。


上喜元は今年の造りからまた若い方が2名入り、蔵全体がかなり若返りました。 造り自体は特定名称酒(本醸造以上)が中心でその比率は90%近くにも
なり現在は少量高品質生産になっています。


レギュラーとなるとどうしても地元消費になるわけですが、酒田の場合は 初孫、菊勇の消費が大きくなかなか他の蔵元では売れないというのは
正直ありますし、レギュラー自体の消費がかなり落ち込んでいるので 一層比率が少なくなっているようです。


蔵元としては造りの規模から 割り切っていて良いのではと思います。特定名称酒よりもレギュラーに
力を入れている蔵元もあります。やまと桜がそうです。こういう蔵元が 1つは有っても良いと思います。


話が逸れてしまいました。(^^;) 造りについては前回、'97上喜元研修 でご覧になれますが、基本的に作業内容は変わりません。麹は今回仲仕事や仕舞仕事などを行いましたが、非常に難しいです。
上喜元では純米酒以上のものは蓋麹という製麹方法を使いますが、 横幅が約30cm、縦が約50cm、深さが約5cmの杉で造られた木の入れ物 (これを麹蓋と言います)の中で麹を造ります。


麹造りで大切なことは温度のコントロールですが、麹に温度計を刺して
温度が下がりすぎているときは集めて山状にして温度を上げるように、 上がりすぎているときは広げて冷ましたりします。麹蓋は縦に積むわけ ですが、上のものは下からの熱で暖まりやすくなります。


これを積み替えて温度が均一になるようにしたりします。私は今まで 床(テーブルよりも大きな台で行う麹造りです)しか経験したことが 無かったので蓋での作業というのは非常に興味深いものでした。


今年は一泊して夜の作業も行いました。 山を作って盛るときは非常に難しくて作業がなかなかうまくいきません。 上喜元は麹担当の堀尾さんと社長が主に作業をされます。


上喜元では放冷機も担当しましたが、米は非常にさばけが良いです。 それだけ吸水(浸積作業)が上手なのでしょう。 放冷機は朝の気温が低い時間帯に行うのですが、蒸す米は前日から
用意をします。洗米して浸積するわけです。上喜元では昨年から 新しい洗米機が導入されていました。造りが上のクラスのお酒は 相変わらず手動式の小さな「洗米器」です。


この洗米作業もさせて頂きましたが、かなり重労働な上、一定の間隔 一定のスピードで確実に作業をこなさないと浸積具合にムラができるので 非常に難しいです。もちろん山田錦等の手動式の洗米は担当の方が
されていましたが、僅か10秒違っただけで吸水具合が刻々と変わります。


米によっては最初は全く吸わず、ある時間を境に突然ぐんぐん水を 吸うものもあり、米の産地や米の出来等で毎年違うようです。
当然、吸水に使う水も全て条件が同じになるように温度を調整したり するわけです。


放冷機ではかなり細かく温度や蒸し米の状態をみて、機械のスピードや 蒸し米を細かく砕く作業をコントロールします。これの指示は杜氏が 行いますが、本当に細かいコントロールを行います。上喜元の佐藤杜氏は
庄内を代表する名杜氏の一人です。


今回の蒸し米は五百万石の60%精米 でしたが、これを上撰(昔で言う一級酒)に使うのだそうです。 米が余ってしまったのかどうかわかりませんが、杜氏は「ちょっともったい
ないよね」と苦笑いしながら仰っていました。(^^;)


今年の仕込みももう終わり後は醪が出来上がったものを槽にかけて 搾っていくわけですが、今年の造りは非常にうまくいったとのことですので 上喜元ファンの方は期待しても良いのではないかと思います。
一部で心配された山田錦の不足の問題ですが、別の地方のものを手配したり きちんとしたルートを確保しているお蔭でほとんど影響は無かったそうです。

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