花羽陽 蔵見学


花羽陽(小屋酒造)は酒田から国道47号線を東へ50kmほどいった大蔵村にあります。 このあたりは豪雪地帯で有名ですが、この日はさすがに積雪はありませんでした。


村内には開場1200年の肘折温泉があり、この温泉は昔、出羽三山のひとつ 月山に登る3ルートの一つになっていたそうです。 すぐ近くには最上川舟下り場があります。
この日も観光客で賑わっていました。


小屋酒造の創業は約400年前の1593年で、現在で26代目になるそうです。 この時期はまだ造りが始まっていませんでしたが、蔵の中は 整然としていて掃除が行き届いていました。 杜氏、蔵人は全て村の近所の方です。この御蔵の特徴の一つに自家精米があります。

山形県の御蔵は規模が小さい蔵が多いので、精米は協同精米が多いです。 協同精米とは酒米を精米業者に依託して精米して もらうことを指します。小屋酒造の場合、精米機が2つあります。この2つをうまく組み合わせて 精米を行っているようです。

以前、業者に依託したことがあったそうですが、業者が40%精米したものと 自家精米で削ったものでは大きさが違ったそうです。 このときは業者のほうが千粒重(1000粒の重さ)が重かった (それだけ磨きが少なかった)そうです。 それ以降、一貫として自家精米に拘っているそうです。

麹室の温度は35℃で、麹蓋はつかわないそうです。 麹を乾燥させると香りがたつそうですが、普通は上のほうから 乾燥していくわけですが、ここでは少し工夫して下からも まんべんなく全体が乾燥するようにしているそうです。御蔵の冷蔵室も管理がしっかりしていました。

3つほど冷蔵室があり、温度がそれぞれ-8℃、2℃、4℃となっていて 出荷が近づくにつれて温度の高い冷蔵室に製品を移していくそうです。タンクは大きいもので3tで、蔵の規模から増産するのは無理だそうです。 甑もまだ使っていました。 槽はヤブタ式で袋香に気をつければこの機械で十分だそうです。

大吟醸 絹を試飲した感じでは上品な舌触り、味わいで文字通り絹のような喉越しです。 やわらかくてやさしいお酒です。飲み頃の温度は12,3℃あたりだと思います。

菊勇 蔵見学


今日は、菊勇(株)にご挨拶に伺ってきました。 軽く御蔵のほうも見学させて頂いたのでご報告します。 菊勇は米所庄内地方の中心よりやや海よりに位置し、
小高い山(海抜40m)の上に鉄筋コンクリート4階建ての酒造場があります。


今日は酒田は秋晴れでたいへん天気が良く、屋上からは庄内平野が 一望できました。庄内地方はかなり大きい平野が広がっているのですが 平野の周辺の山以外の場所で平野全体を見渡せるところは ここぐらいしかないのではないでしょうか? 屋上の眺めは実に見事なものです。

仕込水は地下水をくみ上げています。 60mほど地下まで掘り下げているそうですが、ここが40mほどの 小山の上なので、実際は平地で20m弱掘っているのと同じだそうです。杜氏さんは地場の杜氏で畠中さんという方がやっておられます。 造りが無いときは海で漁をされているそうですが、最近は9月にもなると 漁を終えて造りに入られるそうです。

この御蔵は4階建ての建物の上の階から順に造りの行程が行われます。 4階から1階に移動する度に醸造が進み、お酒ができあがる仕組みです。 原料などはパイプ等を通って下の階に運ばれていきます。


4階

洗米、浸漬(洗米したお米を水に浸す)、蒸米をこの階で行います。 連続蒸米機を使って蒸米するのですが、酒母と麹米は昔ながらの 甑(こしきと読みます。大型のふかし器のようなものです)を使って 行います。蒸したお米はこの階で放冷されます。

精米は協同精米ですので、御蔵の中では行われません。

3階

酒母(しゅぼ)を造ります。酒母室はかなり広くて30坪はあるでしょうか? 醗酵中のタンクもあってとても良い香りでした。 酒母は速醸もとです。

2階

今回は特別に麹室も覗かせて頂きました。 麹室も広くて、麹蓋も今は貴重で板は杉の木で正目(まさめ)に沿って 板を割って造るそうです。 菊勇には全部で2,000枚ほどの麹蓋があるそうです。

普通の御蔵は吟醸酒クラスの麹を造るときに麹蓋を使って製麹(せいきく) しますが、菊勇の特徴の一つに一番安い普通酒を含む全製品を麹蓋を使った 手造りの麹で醸している点が挙げられます。

1階

醗酵タンクは3t仕込みのタンクが44本あるそうですが、それよりも小さいタンク (おそらく大吟、中吟などの特殊なお酒用)のタンクもかなりありました。

 

タンクは半解放型で醗酵中のタンクもあり、タンクの口の部分で泡消し機が 回っていました。

圧搾は「ヤブタ式」と呼ばれる連続搾り機や、昔ながらの槽を使う搾り の2種類があります。特殊のお酒はやはり昔ながらの槽を使って丁寧に搾る そうです。

 

この日は連続搾り機で使用する、袋を洗浄していました。


別棟には瓶詰め作業を行うところがあります。 瓶洗浄、ワンカップ等のカップ洗浄(驚くことにこれも手作業で行っていました)を行い、 蛇管を通し火入れしたお酒を瓶に詰めます。

一部のお酒は瓶殺菌(瓶にお酒を入れてしまってそれをお湯の中につける)を 行うそうです。

やはり瓶殺菌のほうが香りもとばず、香り、味もよくできるそうですが かなりの手間がかかるため限られたお酒しかできないそうです。

菊勇は庄内地方の御蔵では生産量が多い方(約5,000石)ですが、 あれだけのお酒を(それこそワンカップから)手で造っているというのは 並大抵の努力だけではできないことでしょう。
(手造りが良いか悪いかということではなく、手間を惜しまないという点がです)

菊勇の御蔵の特徴は新政酵母と言われる協会6号酵母を好んで使うことです。

この酵母は香りを売りにしている協会9号(熊本酵母)に比べて、 澄んだおだやかな香りが特徴です。吟醸酒になると山形酵母(注:山形新酵母ではなく、協会9号系の変種株を県の 醸造試験場が培養したもの)を用います。

県の指導、御蔵の努力が実を結んでいるようで、最近は品評会での入賞も 増えてきました。

菊勇にとって昭和54年は大英断の年になりました。 なにしろ、この年こそがそれまでに投資した造りの機械を廃棄し 全品手造りに切り替えた最初の年にあたるのですから...。
(機械を使用するのは、上記のように蒸米や洗米、搾りなどの造りに 影響が少ない行程だけにしぼられています)

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