今日は、菊勇(株)にご挨拶に伺ってきました。 軽く御蔵のほうも見学させて頂いたのでご報告します。 菊勇は米所庄内地方の中心よりやや海よりに位置し、
小高い山(海抜40m)の上に鉄筋コンクリート4階建ての酒造場があります。
今日は酒田は秋晴れでたいへん天気が良く、屋上からは庄内平野が 一望できました。庄内地方はかなり大きい平野が広がっているのですが 平野の周辺の山以外の場所で平野全体を見渡せるところは ここぐらいしかないのではないでしょうか? 屋上の眺めは実に見事なものです。
仕込水は地下水をくみ上げています。 60mほど地下まで掘り下げているそうですが、ここが40mほどの 小山の上なので、実際は平地で20m弱掘っているのと同じだそうです。杜氏さんは地場の杜氏で畠中さんという方がやっておられます。 造りが無いときは海で漁をされているそうですが、最近は9月にもなると 漁を終えて造りに入られるそうです。
この御蔵は4階建ての建物の上の階から順に造りの行程が行われます。 4階から1階に移動する度に醸造が進み、お酒ができあがる仕組みです。 原料などはパイプ等を通って下の階に運ばれていきます。
- 4階
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洗米、浸漬(洗米したお米を水に浸す)、蒸米をこの階で行います。 連続蒸米機を使って蒸米するのですが、酒母と麹米は昔ながらの 甑(こしきと読みます。大型のふかし器のようなものです)を使って 行います。蒸したお米はこの階で放冷されます。
精米は協同精米ですので、御蔵の中では行われません。
- 3階
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酒母(しゅぼ)を造ります。酒母室はかなり広くて30坪はあるでしょうか? 醗酵中のタンクもあってとても良い香りでした。 酒母は速醸もとです。
- 2階
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今回は特別に麹室も覗かせて頂きました。 麹室も広くて、麹蓋も今は貴重で板は杉の木で正目(まさめ)に沿って 板を割って造るそうです。 菊勇には全部で2,000枚ほどの麹蓋があるそうです。
普通の御蔵は吟醸酒クラスの麹を造るときに麹蓋を使って製麹(せいきく) しますが、菊勇の特徴の一つに一番安い普通酒を含む全製品を麹蓋を使った 手造りの麹で醸している点が挙げられます。
- 1階
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醗酵タンクは3t仕込みのタンクが44本あるそうですが、それよりも小さいタンク (おそらく大吟、中吟などの特殊なお酒用)のタンクもかなりありました。
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タンクは半解放型で醗酵中のタンクもあり、タンクの口の部分で泡消し機が 回っていました。
圧搾は「ヤブタ式」と呼ばれる連続搾り機や、昔ながらの槽を使う搾り の2種類があります。特殊のお酒はやはり昔ながらの槽を使って丁寧に搾る そうです。
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この日は連続搾り機で使用する、袋を洗浄していました。
別棟には瓶詰め作業を行うところがあります。 瓶洗浄、ワンカップ等のカップ洗浄(驚くことにこれも手作業で行っていました)を行い、 蛇管を通し火入れしたお酒を瓶に詰めます。
一部のお酒は瓶殺菌(瓶にお酒を入れてしまってそれをお湯の中につける)を 行うそうです。
やはり瓶殺菌のほうが香りもとばず、香り、味もよくできるそうですが かなりの手間がかかるため限られたお酒しかできないそうです。
菊勇は庄内地方の御蔵では生産量が多い方(約5,000石)ですが、 あれだけのお酒を(それこそワンカップから)手で造っているというのは 並大抵の努力だけではできないことでしょう。
(手造りが良いか悪いかということではなく、手間を惜しまないという点がです)
菊勇の御蔵の特徴は新政酵母と言われる協会6号酵母を好んで使うことです。
この酵母は香りを売りにしている協会9号(熊本酵母)に比べて、 澄んだおだやかな香りが特徴です。吟醸酒になると山形酵母(注:山形新酵母ではなく、協会9号系の変種株を県の 醸造試験場が培養したもの)を用います。
県の指導、御蔵の努力が実を結んでいるようで、最近は品評会での入賞も 増えてきました。
菊勇にとって昭和54年は大英断の年になりました。 なにしろ、この年こそがそれまでに投資した造りの機械を廃棄し 全品手造りに切り替えた最初の年にあたるのですから...。
(機械を使用するのは、上記のように蒸米や洗米、搾りなどの造りに 影響が少ない行程だけにしぼられています)