初孫 蔵見学

今日は当店スタッフ5名で初孫醸造元、東北銘醸株式会社に蔵見学にいきました。
相手を務めてくださったのは、後藤営業部長(下の画像の方です)と当店営業担当の佐藤さんと、


たいへん多忙な方が直々に工場の隅から隅まで案内して下さいました。
通常の見学コースでは入れないところまで!
滅多にない機会ですので、当店ブログをご覧の皆様もぜひ一緒に初孫蔵見学を疑似体験しましょう! (^^)


後藤部長は営業サイドの方でありながら、造りについてもきちんと掌握されていらっしゃる方です。



まずは、スタッフ全員白衣と帽子着用です。



その後、アルコールで手を消毒。
蔵元内の衛生管理は徹底しています。

「お客様の口に入るものだから」

は後藤部長の弁。

通常の見学はこの廊下のガラス越しに行われます。
廊下の向こうの造りの現場に入ることはありません。



スタート地点は一階。

この黄色い大きな袋の中に原料米が入っています。
出羽燦々、山田錦、雄町、多種多様な米を使っています。



この上にタンクがあり、米が浸積されます。
目的の吸水になった時点で一気に水が抜けるような仕組みになっています。

大吟醸などで限定吸水を行うのと同じ仕組みが正確にそして均一に行えるようになっています。



大吟醸などの限定吸水はこのように小さい単位で昔ならのザルを使って行います。
機械化している部分は手造りのノウハウを活かして、そして機械でできない細かい作業は人間の手で。
適材適所で初孫の酒が造られます。



先ほどのタンクの上のところで、洗われた米を浸積タンクに広げる作業を体験!
がんばって米を張っているのは、山居倉庫店担当、たま子さんです。



浸積担当の方から、説明していただきました。
機械を使って正確な作業はできるのですが、最終的な判断はやはり人間の目と経験、そして勘も大切とのこと。
今の酒造りは原料処理(精米・洗米・浸積)がとても重要視されています。



この大きな機械が蒸米を作る蒸し機です。
人間の大きさからその大きさがわかると思います。



手前半分は蒸しが終わった米を放冷(冷やす)する放冷機です。
大きいですね〜。
ここまでの規模のものは山形県内にはありません。

単に大きいだけでなく、手作りのノウハウをコンピュータ制御で米に投影しています。



今日は蒸しの作業は既に終わっていました。
これは放冷機の中ですが、驚くほど綺麗です!
米粒一つ残っていませんでした。すごいですね。



大きな放冷機のとなりには昔ながらの甑(こしき)もあるんです。
大吟醸などの大きい規模で作れないものはこちらで作ります。
ただ、大きな放冷機でも同じ作業は可能なのだそうです。

大吟醸は一度に大量に仕込むことがないので、効率も考えると甑を使った方がよいということで、今もこの甑は現役選手です。



ここはどこだかわかりますか?
なんと初孫の心臓部、麹室(こうじむろ)です。

通常は絶対に入れないところの筆頭がここです!
今回は特別に許可を頂いて入れていただきました。
初孫のみなさん本当にありがとうございます。

大吟醸などの手造りの麹はこの部屋で昔ながらの作業で小さく小さく造られます。
手に持っているのは麹造りに必要な道具です。
この道具も手作りです。



麹室もたいへん立派で部屋は二部屋ありますが、一部屋でも十分なスペースがあります。
この見事な室の材料の木は亡くなられた会長の山から切り出された木を使われているとか。
今ではこんな贅沢な麹室は造れませんね。

後藤部長の後ろにある木の箱は最も手間がかかる麹造りに使われる麹蓋(こうじぶた)です。
これに少量の麹を盛り、手作業で積み替えてコントロールし、良質の麹を造ります。




麹室で発見!

魔法の水!!!


ついに初孫の麹造りの秘密が公に!

と思ったらただの蒸留水だそうです。(^^;)
こういうユーモアがあるのも微笑ましいですね。



良い麹を造るために最善を尽くした上で、最後はやっぱりこれ。
松尾様です。
壁に酒の神様、松尾様のお守りが貼られています。



これは全国的にも貴重な実験的な麹造りの装置です。
ものすごいコストがかかっています。
自動とはいえ、初孫の麹造りの経験やノウハウが全て投入されています。
酒造組合の委託品でもあるためプロトタイプというか実験的な設備になっています。



機械化 = ダメ、手造り = 本物

と思われている方も多いようですが、初孫に関しては少なくともそれはあてはまりません。


たとえば、精米ひとつとっても人間の手で米を35%まで磨き上げるなんてことは不可能です。

全ての造りが手作業で行われていた時代に、現代の私達が買うことができるお酒を作ることは不可能なのです。

麹造りもそうです。

今は、昔の人たちでは想像できないほど贅沢なお酒を飲んでいるのかもしれませんね。

この製麹造りは先ほど見学した手造りの麹造りのノウハウを安定して、普通酒にまで適応できるように苦労を重ねて作り上げた逸品です。

ここにも製麹担当の職人が配置されています。



出来上がった麹は破精(はぜ)の具合も良好で、食べても美味しい麹でした。



場所は変わってここは槽(ふね)のあるところです。
出来上がった醪はここで搾られて清酒になります。

藪田式(やぶたしき)の機械が二基あります。

私は藪田式の機械しかないのかと思っていましたが、少し離れたところに昔ながらの佐瀬式のものもあります。

鑑評会用の酒などはもちろん雫採りです。



ここは初孫自慢の大型サーマルタンク室の1階部分です。
通常サーマルタンクというと、750kgから1t程度のものが多いのですが、初孫のはもっともっと大型です。

なんとこのタンクが20基以上! (@_@)

今年は暖冬だったので、活躍したようです。
それと製品貯蔵にも十分役立ちますので品質管理にはもってこいです。



タンク室二階横の酒母室にやってきました。
スタッフ工藤が酒母の櫂入れ体験。

初孫の大きな特徴に酒母が生もとであることがあります。
もっとも時間も手間もかかる生もと造りで、レギュラークラスまでほぼ全量を造るのは全国でも僅か四軒しかありません。

造りは近代化しても変えられないものは変えない、初孫のこだわりを感じます。

生もと造りはたいへん手間と時間がかかる造りのため、初孫の酒母室は他では考えられないほど広いです。



続いてスタッフたま子さん体験。



スタッフ由紀も体験。



きき酒チャンピオンスタッフ古家さん体験。



酒母の香りを嗅ぎます。
その後スプーンで試食(!?)しました。
酸味があってまさにヨーグルト。


順調に乳酸が育成されているのですね。



みんなで穴を覗き込んでいますがわかりますか?
これは貯蔵タンクの上の開口部です。
中まで見えるようにと、わざわざ電球を持ってきて下さいました。



こんなに大きなタンクでも櫂棒は使います。
タンクの上の部分は全てコンクリートで覆われていて、非常に安全に作業をすることができます。

開放型のタンクで足場が少ない蔵もありますが、これだと担当されている方は安心して作業が出来ますね。



下に見えるのが3tくらいのタンクですが、タンク室の2階からみるとこのくらいの高さがあります。

どのくらいの大きさか見当がつくと思います。

この水色の液体はなんと水。初孫の敷地内の井戸水から取水したものです。
すごく綺麗な水ですね。

初孫が酒田市の旧市街地から、この地を移転先に選んだ条件のひとつに水質がありました。ここ十里塚は水質も良好です。





ここはタンク室横の制御パネルです。
ここで内緒のお酒を試飲。(^^;)
出羽燦々を使ったお酒でした。



ここで初孫の製造トップの後藤部長(杜氏)が登場。
(青い帽子の方です)
山形県を代表する名杜氏のお一人であることに異論がある人はいないでしょう。


フラッシュ使わなかったので写真ぶれちゃってますね。
ごめんなさい。> 後藤杜氏


これで一通り見学が終わったのですが、離れた別棟にある精米工場まで見学させていただきました。

初孫は酒造りに使う精米機を自社で五基も所有しています!
これはすごいですよ。

縦に筒状のものが五基ならんでいますが、それが精米機です。
一基のお値段は...すごい価格です。(^^;;)

それがなんと五基も!

山形県内でこれだけの設備を持っているところはありません。
説明して下さっている方は精米担当の職人さんです。

お一人でほぼ全てを掌握されているのだとか。



お話によると一番怖いのは停電だそうです。
酒田は雷が多いところで、初孫のある十里塚も例外ではありません。
途中で機械が止まってしまうと、米に影響が出てしまうので非常に気を遣われているようです。



モニターには目標の精米歩合や現在状況などが刻々と映し出されます。



下から精米機の上を見上げるとこんな感じです。
三階建ての建物分くらいの高さはあると思います。
それを覆うように体育館のような建物があります。



最後にみんなで記念撮影。
左から初孫仕込担当の方、後藤杜氏、当店スタッフ五名と、後藤営業部長です。

初孫営業佐藤さんがシャッター押してくださいました。
ありがとうございます。(^^;)

二時間近く、ひとつひとつ丁寧にそして普段入れないところまで説明して下さいました。

初孫の酒造りをつぶさに見ていくと、いかに高品質な酒を安定して造るかという蔵の方針がとてもよくわかりました。

大量生産のための機械でなく、あくまでも今までの手造りの技術をさらに高い水準で全ての酒に行き渡らせるための機械とそのシステム造り。

単に機械を入れただけではないことがよくわかりました。

そして、その最新の技術と並行して、人間の手造りの技術もまたさらに上のレベルを目指して切磋琢磨していること、これはたいへんすばらしいことです。

日本酒は世界的にも稀な並行複醗酵(糖化と醗酵が同時に進む)のアルコール飲料です。

初孫は最新の機械による技術と昔ながらの手造りによる技術の二つが同時により高いレベルをめざしている、違った意味での並行複醗酵の蔵なのだなと思いました。

初孫のみなさん、貴重なお時間を頂戴して本当にありがとうございました。

旨い酒を提供したいそんな初孫スタッフのおもいが伝わってきました。
木川屋もがんばって応援しますので、今後ともよろしくお願いいたします。

P.S. この年に拝見させていただいた鑑評会出品酒が全国新酒鑑評会で見事金賞を受賞いたしました。(^^)

おめでとうございます。

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