「自信の持てる酒ができたら持ってきます! 」と言い残して東北泉から東の麓へ移籍した神杜氏。
3年ほど経ちましたが...何も音沙汰がありません。
ということで、こちらから行ってみることにしました。
雪はだいぶ少なくなりましたが、まだあちあちに残雪があります。
放冷機(蒸米を冷やす機械)は通常の蔵元の半分ほどの幅のもの。
東の麓は1896年(明治29年)創業です。
江戸時代、米沢宮内地方で、領主より特権を得ていた在郷商人酒田屋利右衛門氏の酒造部門を、当家六代栄次が引き継ぎ創業したもので、以来現在まで古い伝統を守りながら、たゆまざる酒造技術を重ねています。
山形県南部に位置する置賜盆地は吾妻連峰を望み、澄んだ大気、厳しい冬の雪と寒さ、そして清らかな水が酒造りに非常に適した地で東の麓は醸されます。
造りは2017年現在、7名で行っています。
製造部長と杜氏の神杜氏以外は造りの時期だけ蔵に入る季節労働の方になります。
東の麓は創業以来、明治・大正・昭和の蔵を継ぎ足すかたちで製造を行っております。
この日は明日の仕込みのために原料米の前処理も行っていました。
仕込み水は軟水で水道水を濾過して使用しています。
水道水といってもダムから取水している良好の水質の水です。
内陸部のためかなり冬期間はかなり気温が低く、神杜氏によれば、蒸しは東北泉時代よりも10分長く行っているそうです。
放冷機は一般的なサイズの約半分で、下に車輪がついているため可動式で使用していないときは片付けることができます。
東の麓の心臓部といえる麹室(こうじむろ・麹を製造する部屋です)
麹室は床麹を止め、引き込みの場所を広く取る形に変更しました。
東北泉時代の箱麹を導入し、東北泉で培った技術を東の麓で応用すべく、試行錯誤をしています。
メインは箱麹ですが、鑑評会出品酒は若手への技術継承の意味合いも込めて蓋麹で仕込んでいるそうです。
仕込みに使用しているタンクの大きさは600kg〜2tまでで、サーマルタンクは4本あります。
サーマルタンクでないタンクは温度管理にスターフィン(星型)の水冷式冷却装置を使用しています。
造りは速醸だけでなく、山廃仕込も行っており泡無し酵母も使用しています。
東の麓では2016年に薮田式圧搾機を新規に設置し、今後少しずつ造りの設備の改良を重ねていくそうです。
画像の青い機械が圧搾機です。
数々の賞に輝く蔵元ですが、名杜氏が加わり今後がさらに楽しみな蔵元です。
また、近年になって東北芸術工科大学の学生がプロデュースとデザインをした新ブランド「天弓」も人気を博しています。
「天弓」とは、雨が降った後の晴れた空に見られる「虹」のことを意味しています。
天気の「晴れ」は、「ハレ」として節目を指す言葉としても用いられ、儀礼などの「特別な日」を指します。これに対し、「ケ」は「普段の日」を表すとされています。
「天弓」は、そんな「ハレ」の日にも「ケ」の日にも、感謝の気持ちを届けてくれる日本酒として開発されました。ラベルは虹をベースとしながら、「ハレ」と「ケ」の日々をそれぞれ表すデザインとなっています。
天弓シリーズを中心にこの日はさまざまな酒を試飲させていただきました。
最後に進藤製造部長と一緒に記念撮影。
天弓、今後取り扱ってまいりますのでみなさんどうぞよろしくお願いいたします。
これから酒質向上が期待される新規取扱銘柄です。