平成6年から平成26年まで20年間お酒を熟成させる試みだった「古酒二十歳の会」。
木川屋はその事務局と酒の保管を担当いたしました。
その会の発足の前に取り引きを開始した蔵元が竹の露です。
当時は金野社長が御健在で、白露垂珠の銘柄も立ち上がったばかりでした。
古酒二十歳の会への入会をきっかけに、麹室を新造し、量の酒から質の酒へと一大転換を行いました。
白露垂珠の吊雫原酒は当店が金野社長と二人三脚で広めたのが、もう20年も前になってしまいました。
その後取り引きをお休みしていた竹の露ですが、2019年に約20年ぶりに再開をすることになりました。
今回はその勉強を兼ねて、懐かしくも新しい蔵見学となりました。
案内してくださる方は現代表の相沢代表社員(竹の露は合資会社なので正確には社長ではなくこのような表記になります)です。
雪が被っている建物。この中に竹の露の一番大事なもの「水源」があります。
竹の露の近くには温泉施設もあるほどなので、水質としては酒造りには難しいはずなのですが、なんと300mを超える深さまでの井戸を掘り、良質の水を確保しています。
井戸の様子を熱く語ってくださる相沢さん。
当時の苦労がよくわかります。
これだけいろいろな地質を採取し、水質を確認していったのです。
水晶の地層から汲み上げられた水は最初はにごりがあり、タンクの底に沈殿物が生じます。
水脈を傷めないように毎時間30リットルの速度で汲み上げられます。
上澄みを汲み上げて、別のタンクに移す行程を何度も経て、このように澄んだ水へと生まれ変わります。
この水はこのタンクで貯蔵され、プレートヒーター等で加熱されて
酒造りには驚くほど大量の水が使われます。
なので、良質の水源があるところが酒蔵のある場所の第一条件となります。
この水源を確保したおかげで、年間300万円もの水道代がなくなるだけでなく、超軟水の水質は高温長期醗酵にも耐える元にもなるのです。
竹の露では悪名高い(相沢さんがそうおっしゃったのです ^^;;;) 連続蒸米機を使っています。
とは言うものの、「これはこれで良いところもあるのです」という相沢さんの言葉どおり、連続蒸米機にも良いところはあります。
その一つが、米ごとの調整が可能なところです。
和釜を用いた一般的な甑(こしき)の場合、下に留め用の大量の掛け米、その上に仲などの掛け米、一番上に麹米などを張り込んで蒸し上げます。
一番大切な麹に合わせて蒸し上げるので、どうしても下の米が水分が多くなりすぎたりすることもありますが、
この連続蒸米機ですと順番にベルトコンベアで処理できますので、細かく修正することも可能なのです。
もちろん高品質酒の浸漬(しんせき・米を水に浸す)はザルとストップウォッチを使っての手作業です。
2階にある麹室にやってきました。
ここに足を踏み入れるのは20年ぶりです。
この奥の休憩室で、本木杜氏がタラ汁を作ってくださってみんなで酒盛りしたことを思い出します。
本木杜氏は体調を崩されていて今日はお留守ですが、本当に楽しい夜でした。
竹の露といえば一升盛蓋麹製法。私も20年ほど前にこの作業を体験させていただきました。
酒造りの肝心な行程である麹はこのように丁寧に手作業で造られます。
この棟の窓からは裏の竹林が見えます。
竹の露の蔵元の名前の元になった竹林ですね。
どこの蔵にも必ずある神棚。
しかしどこの蔵にも祀られている酒造りの神様(松尾様)の御札がありません。
実は羽黒山も修験道の山。
その名残もあり、以前から祀られている神様が別棟にあるため、松尾様は祀られてないのだそうです。
数々の種類の酒米が並べられています。
竹の露がある旧羽黒町は米どころ庄内地方でも最も酒米作りが盛んなところ。
酒米研究会も存在します。
その中心にあるのが竹の露です。竹の露の酒米は全量酒米研究会から調達しています。
こちらは新しく投入された分析機。
かなり高価なものだそうです。今までの設備と異なる点もあるので、これから特性に合わせて使い込んでいくそうです。
醪(もろみ)の温度経過や行程を説明してくださる相沢さん。
「この醪はこういう変化をして、こっちはこうで...」
まるで自分の子供のことを語るように説明しくれます。
丁寧に分析とデータの蓄積を重ねて醸造する相沢さんですが、それでもなぜこのように醪が推移することがあるのか
わからないこともあるそうで、まだまだ酒造りの奥は深く、そしてたいへん興味深いとのことでした。
真摯に酒造りに取り組まれている様子はたいへん伝わってきました。
相沢さんの心遣いで、竹の露のラインナップの全種類の酒をきき酒させていただきました。
出品酒から熟成酒までたいへん勉強になりました。
酒・水・米・人全てが地元の「地の酒」です。
最後にみんなで記念撮影。
忙しいところを貴重なお時間を頂戴して勉強させていただきました。
相沢さんありがとうございます。こづえさんとも久しぶりにお会いできて嬉しかったです。
そして、改めて、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。