くどき上手 蔵見学

場所は庄内平野のど真ん中の羽黒町に位置します。 少し離れたところに出羽三山(月山、羽黒山、湯殿山)があり、 亀の井酒造のすぐ近くにも大きな大きな鳥居があります。

御蔵のまわりはぐるりと田んぼに囲まれています。

ここの御蔵は杜氏がいません。 ......というと語弊がありますが、「要は昔ながらの杜氏」がいないのです。

この御蔵は代表取締役でもある今井氏がお酒を醸しています。実際お会いしてみると想像以上にお若い方で驚きました。

40代前半といったところでしょうか。 建物はプレハブ建築の白くてとても綺麗なもので 中は白い壁にグリーンのコンクリートの床です。

御蔵自体の面積はそれほど広くないのですが、これほど清潔な御蔵というのも そうはないでしょう。

機械を使用して...というと、「やっぱり手造りのお酒がいい」と仰られる方は眉をしかめられるかもしれませんが、 私が見た感じでは、とても技術屋的な考えを持つ御蔵に感じました。

職人的な感を大事にしつつ、ある程度数字を使って酒質を安定させようと 努力されているように感じました。

今井氏のお話では、本当は良い杜氏が欲しいとのことですが なかなかそのような杜氏が他所から移ってくれるわけでもないので 自分で勉強しながらお酒を醸されているそうです。

とはいっても今井氏も全くの素人ではなく、 それどころか東京農大の醸造化出身の立派な技術者です。

仕込水は月山水系伏流水で硬水と軟水を調合して使用しています。 生産石高は1,000石です。 山形県は小さい蔵が多くだいたい生産石高は1,000石が多いです。

しかし、逆に小さいからこそ吟醸酒のような少量生産のお酒に向いている 点もあると思います。

この御蔵は搾りの機械は2種類あります。 空気圧で搾る圧搾機、と昔ながらの槽です。この御蔵の特徴は普通酒よりも特定名称酒(吟醸酒、純米酒、本醸造等) の割合がとても多いことがあると思います。

いずれは特定名称酒だけを醸せるようにしたいとのことです。御蔵の中の貯蔵タンクは3tほどのタンクが14ほど、 それとは別に小さいタンクがいくつかありました。

この御蔵は、大きい冷蔵室があり普通酒から吟醸酒まで全ての酒を この冷蔵室で保存しています。 徹底した品質管理もこの御蔵の特徴です。麹室はちょうど麹を仕込んでいるところで、中には入れませんでした。

透明のビニールシート越しに麹蓋が見えましたが、麹の寝息(?)でも 聞こえてきそうな雰囲気です。

出羽桜 研修日記 画像

研修の様子の画像です。

あたり場(休憩所)でほっと一息。

手前が石沢杜氏、奥が井上さんです。泊まりの時は朝食に、 午前10時の休憩に、昼食に、午後3時の休憩に、ミーティングに使われています。

枯らし場に置かれた麹米

朝6時に行われた出麹作業を終えたばかりの麹米です。 香りをお届けできないのが残念ですが、とても良い香りがします。 食べてもほんのり甘くて美味しいです。

蒸米の掘り起こし

甑で蒸された米を放冷機に入れるために、米を掘り起こしています。 これが見た目以上の重労働です。

放冷機の中の蒸米

掘り起こされた蒸米は放冷機の中に入れられます。 これは正面から写した写真ですが、この両脇に一人ずつ立って 米の塊を小さくするようにかき混ぜます。

麹室で麹を振りかける私

床に広げられた米に麹菌を振りかけます。 下手くそなのでなかなか均一に振りかけられません。(^^;)

押し槽の積み替え作業

写真では切れていますが、向かって右側にもう一つ槽があります。 これは右側の槽から左側の槽に醪が入った袋を移して もう一度搾るところです。

槽がけのお手伝い(1)

管の中から醪が出てきます。これに袋をかぶせて 管をひねると醪が出てきます。袋をどんどん積み重ねて 醪を搾ります。

槽がけのお手伝い(2)

醪がだんだん袋の中に溜まってくると結構重くなります。 間抜けな顔になっていますが、真剣に作業しています。

槽がけのお手伝 い(3)

全て積み終わると、この蓋を下ろして油圧で下に押します。 この画像は槽の機械の下から蓋を見上げたところです。

搾りが終わると袋の中には酒粕が残ります。 酒粕は袋の中に入れてまとめます。

仕込み部屋

醪の状態を見て、櫂入れを行ったり温度を調節したり、成分を調べるために 抽出したりといろいろな作業が行われます。全ての作業が終わるとタンクの壁面を 拭きます。

2階の酒母室

もとたて(酒母造り)の作業が終わった直後の酒母室です。 綺麗に片づけられて、冬の澄んだ空気が流れています。 ここに居るとなんとなく落ち着きます。


酒母タンクの掃除

酒母ができあがって醪のタンクに中身を移したあとは 酒母タンクを洗います。洗ったタンクはまた2階に上げるのですが どうやって上げ下げしているのでしょう。 答えは97年の画像データ集にあります。(^^)

次の日の準備

洗米して明日仕込む米の準備をします。 写真の方は手取川酒造の息子さんの吉田さんです。 1年間出羽桜山形工場で造りの修業中です。

出羽桜 研修日記 5日目

いよいよ最終日です。 作業はいつもどおりですが、最終日だとなんとなく力が入ります。 一緒に一週間お付きあいして下さった方々の顔や声をもう一度 しっかり胸に刻み込みます。来年も時間をみつけてお邪魔させて頂くつもりです。 きっと今年よりもお役にたてると思っています。



出羽桜山形工場の皆様へ



石沢杜氏


へまばかりやっていましたが、いろいろと教えてくださって たいへんありがとうございました。 奥様にもよろしく御伝えください。 身体にはくれぐれも気をつけて。酒田に来られた際はご連絡下さい。



渡辺さん


お仕事中の検査室を見せて頂きありがとうございました。 渡辺さんも身体にはくれぐれもお気をつけ下さい。 またお会いできることを楽しみにしています。
来年はもっとお話お聞かせください。



山川さん


来年はもと(酒母)を教えてくれると仰ってくださいました。 楽しみにしています。約束ですよ。 事務所の電話回線をかりるときは助かりました。
来年もと場でお会いしましょう。



村山さん


リンゴジュースとてもうまかったです。また飲ませて下さい。 槽がけでは全く役にたてなくてごめんなさい。 農業も身体に気をつけてがんばって下さい。
またお会いしましょう。



大石さん


放冷機では作業の方法から後かたづけまで全て教えていただきました。 ありがとうございます。 Windowsについては私はまともに使ったことがなかったので
きちんとお答えできませんでした。ごめんなさい。 来年また造りでしごいてください。



井上さん


造りについて私の間抜けな質問にもお答え下さってありがとうございました。 たいへん参考になりました。 5月にはご結婚で新婚旅行や社員旅行など過密スケジュールのようですが
体調を崩されないように。 きっと近いうちに展示会などでお会いできると思います。 楽しみにしています。



吉田憲一さん


今月いっぱいで退社されるのはたいへん残念です。 酵母の香りを嗅がせていただいたり、麹や酵母の話はとても参考になりました。 もやし(麹菌)の振り方がうまくなったと言われたときは
とてもうれしかったです。


車の事故には気をつけて下さいね。 (自分が注意していても「もらい事故」はありますから) 快くお店にお邪魔させて下さったお父様、お母様にもよろしくお伝えください。
たいへん参考になりました。山形に行ったときはまたお邪魔します。



吉田行成さん


ご実家の手取川に戻られてもお仕事頑張ってください。 直接お会いできなくても、手取川のお酒の味が行成さんの近況報告だと思って 飲みますので。


一生懸命な働き方やノートにデータをとっての分析など これからがとても楽しみです。いつかどこかで必ず'お会いしましょう。 Macintoshのパーツに関してはいつでも調達いたします。



古城さん


何も知らない私にいつも優しくしてくれてありがとうございました。 来年古城さんがどのくらい変わっているか今から楽しみです。 室(むろ)ではたいへんお世話になりました。


憲一さんも古城さんには期待されていると思います。今のうちに 吸収できるものは吸収しきって自分のものにして下さい。 ミニバスケットの指導も頑張ってください。




皆さん酒田へお寄りの際はぜひ当店にいらしてください。 心からお待ちしております。 一週間、皆様への感謝の気持ちでいっぱいです。 たいへんありがとうございました。

出羽桜 研修日記 4日目

丸一日お手伝いをさせて頂くのは今日が最後です。 先が見えると気分も楽になります。 造りの方々は、今よりももっと忙しい吟醸の時期も作業をされているのですから、 本当に頭が下がります。 そんなお酒を売れる、飲めるということはつくづく幸せでもあります。


もう使いっぱしりの私も一日の自分の仕事が見えてきました。 いつもどおりの仕事をしていたら、今日は槽がけをさせて頂くチャンスに 恵まれました。


ポンプで吸い上げた醪を大きな蛇口(?)から酒袋に入れて 開いた口を下に折り込んで醪がもれないように槽につんでいきます。 出羽桜山形工場の木製の槽(これも貴重ですね)でしぼりますが
圧力も頃合いをみて変化させているようです。


夜は最後の泊まりということで、営業部の寒河江さんに飲みに連れていって頂きました。 寒河江さんのありがた~いお話を聞いて蔵に帰ってきました。
当店は出羽桜さんに絶対の信用をおいておりますが、 同じような信用を出羽桜さんからもして頂いてるようで たいへんありがたく思いました。


飲みすぎてしまったようで12時付近の切り返しは意識を失って寝て しまっていたようです。

出羽桜 研修日記 3日目

切り返しは12時半と朝6時でした。 今日は出麹もありました。

洗い物や掃除も覚えてきました。 ものをしまう場所とか...。 今日も放冷機です。 手の爪のところが逆剥けして痛いです。 ほぐし方もなれてきました。 ほぐすのは米の塊を砕くことをいいます。


放冷機の作業もたいへんですが、その後の掃除のほうがたいへんです。 たわしのようなものでこびりついた米を落とします。


酒母室や分析室も見せて頂きました。 蔵の奥のほうが地盤沈下で斜めになっています。 麹米も手で放冷して温度をはかって酒母タンクに入れます。
酒母タンクはとても小さいです。 ドラム缶を大きくしたようなタンクです。 投げ込まないでゆっくり静かに入れます。


出羽桜は速醸なので早く仕上がったものは12日、遅いもので14日です。 仕上がりは分析室の数値をみながら、もと屋さんが決めます。 出羽桜山形工場のもと屋さんは山川さんという方です。
お父様も出羽桜で営業をされたことがあるそうで 出羽桜の品揃えに関しては目をみはるものがあります。


吉田さんは継ぎたくないようなことを仰っていましたが
あの御店をお父様の代でつぶしてしまったらもったいないです。


室(むろ)で麹米や掛米を盛ります。 ほとんど手作業です。機械を使うのは切り返し機だけです。 手で切り替えて機械に入れてまた手で切り返します。醪の温度は温度計で計って、氷をいれた円筒形の容器をいれたり
お湯を入れたものをタンクに入れて調整します。


室で麹を見るのは(吟醸は2時間おきですが) だいたいが夜中11時、朝6時、昼11時、夕方4時、夜7時(前後1時間のずれはあります)
のようです。夕方に温度が上がっていない(菌が繁殖していない)とあせるそうです。


簡単な洗い物を済まして明日に蒸す米を甑に運びます。 クレーンでつり上げた米を甑に押します。 米が入った入れ物にフックをかけてロープを引く方と米を掛け声にあわせて米を押します。


私は押す作業をお手伝いしました。 甑の横に登りまんべんなく蒸されるように米を広げ、布をかけます。


夕方の休憩が終わるといつものように櫂入れしてタンクふきです。 今日も酒盛り & 切り返しです。 身体は少しずつ慣れてきましたが、手荒れがひどくて親指を除く8本すべてが
逆剥けしてしまいました。 朝のお風呂が楽しみです。

出羽桜 研修日記 2日目

切り返しは昨日の8時と11時半に行いました。 今入っているのは天幕の棚が五百万石(精米55%)、 もう一つは普通酒の他用途米(精米65%)です。 留め麹で65%のやつを造っています。明日は山田錦の50%と雪化粧の55%が入る予定です。 発泡酒が一番手がかかるそうです。 貯蔵でガスが酒にとけるようにするそうです。 タンクは圧力2kg/cm2まで耐えられるそうです。


朝一番の仕事は櫂入れです。 モト麹はとけやすいようにある程度水分を残しています。今日は県の鑑評会の一般公開の日だったので 午前中は山形県の工業試験センターに行って県内の蔵の
酒をきいてきました。


会場に上喜元の杜氏の佐藤正一さんや米鶴の菅井さんとか 菊勇の杜氏さんや松峰の富士の蔵元や知っている顔がいっぱいいました。
一通りあいさつを済まして、酒をきいてみました。


飲んだ中で良かったのは、出羽桜、初孫、上喜元、栄光冨士、 麓井、竹の露でした。 我らが(?)山形工場のお酒もとても良好でした。 竹の露はよく香りが出ていてこの前お知らせした。
全量首吊りで造った蔵古流は良いと思います。帰ってきて洗い物(櫂や布袋など)をやります。 二日目にして手がひび割れてきました。 (軟弱な手なんですね)


午後からは蒸しが終わった米を放冷といって冷やすのですが その放冷機の横に立って、米を細かくします。 これがきついです。 杜氏さんの横で作業していましたが、杜氏さんは流れるコンベアー
に合わせて温度計を差し替えながら細かくします。放冷が終わった麹米はかついで運びます。 例によって重いわけですが、30~40kgほどです。


あとは一番下っぱということで掃除をしました。 掃除、洗い物も量が多いのでたいへんです。 でもこれが下っぱの基本の仕事ですし、雑菌がついてはいけないので
丁寧に洗います。今日の切り替えしは8時と12時の予定です。 吟醸のときは当然2時間おきで、そのときは造りの研修は無しだそうです。


ほとんど休みなしで造るそうですので、これぐらいできついなんて
言っていられないんですよね。


今回は山田錦が多めにあるそうで、35%まで磨いて吟醸造りの練習も兼ねて 特殊なお酒を造るそうです。

出羽桜 研修日記 1日目

昨日は天童工場を拝見させて頂いたのですが、 昨日の夕方には山形工場にお邪魔させていただきました。

山形工場は10人で造りを行っています。 若い方も数名いらっしゃいます。 手取川の社長の息子さん(28才)も造りの修行でいらしていて もう1年になるそうです。夜は酒盛りになったわけですが蔵の人は量を飲みます。 私は限界近くまで飲まされてしまい、知らないうちに寝込んでしまいました。

夜中には起こされて麹室で切り返しの作業です。 思ったよりも体力を使います。
布で包まれている麹米は広げて手で揉みほぐします。 泊まりの人は二人居て毎日交代です。 私はずっと泊まりなので毎晩起こされる予定です。 朝の6時にも同じ作業を行いました。


8時になると造りの人が出勤してきます。 私はまずタンク室で櫂(かい)を使って醪をかき混ぜました。 櫂がタンクの底に付くまで下げていき、引き上げます。
作業を行い始めた直後は醪から泡がでてきます。 まるで眠っていた人を叩き起こしてしまったような感じです。


出羽桜では掛米の運搬にエアーシューターを使うのですが
調子が悪いらしくて、今回は担いで運びました。 布にいれた蒸米をサンタクロースのように運びます。


麹室では麹を振って種付けを行いました。 中は暑いのでTシャツ一枚の作業です。 多きな机の上に麹米がおいてありますのでそれをほぐして 広げて種付けを行います。
麹はオリーゼという山形県の麹を使用しました。 よく米を混ぜて布をかぶせて保温します。 ちょっと舐めてみましたが黄粉みたいな味でした。


昼前には使った布や道具を熱湯で洗います。
一通り作業が終わると12時でした。


今日は仕事が多かったのか休憩は1時30半まででした。 私は疲れて寝ていました。 午後の仕事はまず櫂入れです。 午前と同じ要領で櫂を入れていきます。
出麹といって麹室での作業が終わった麹もからし場に持っていき 乾燥させます。



今日はからしが終わった麹を留め添えでタンクまで運びました。 布に入れた麹米をタンクに投げ込むわけですが、 投げ方が悪くて布の裾を濡らしてしまったりしました。浸漬が終わった米を蒸し器に入れるにはクレーンを使います。
蒸し器で広げて蒸すわけです。それが終わると今度は槽かけの手伝いです。 出羽桜山形工場は槽が二つあります。どちらも昔ながらのものです。


ヤブタ式のものは本社の天童工場で使用しています。
一度搾ったものをとなり槽に移してもう一度搾ります。もう一度麹室に行き、麹をよく混ぜます。 今回のはハゼ具合がよいそうです。 (麹がうまく付くことを「はぜる」と言います)


櫂入れをしたときにタンクの内側についた醪もきれいに拭き取ります。 タンクの内側についているものは酸化が早いので雑菌が繁殖しないように するためです。槽かけが終わった袋も300枚以上ありますが、これも洗いました。
蔵の中は寒いのですが、ずっと身体を動かしているので 苦になりません。(最初は寒いです) 5時になって作業が終わりました。 ミーティングを行って、連絡事項や造りの反省点を述べて終わりです。


今日もまた酒飲みです。自分のペースで飲めると良いのですが...。

出羽桜 天童本社 蔵見学

出羽桜酒造さんにお邪魔しました。 この日見学させて頂いたのは天童本社の工場です。 (私がお手伝いさせていただくのは山形工場です)

酒造好適米ですが出羽桜は一等米から三等米まで使っていました。 三等米のほうが当然品質が落ちてしまうわけですが、 それを選米機にかけて良いところを選んで使うそうです。

米の精米歩合も高くて、3年ほど前からコンピュータ制御の 精米機を導入したそうです。米を放冷機にいれるときは人が担いで運んで手で入れます。 これには理由があるらしくて、水の吸わせ具合などを 人の手で感じとるためのようです。

この蔵はとにかく米を大事にする蔵です。仕込水は地下水をくみ上げて使用しています。 飲んでみましたが私が住んでいる酒田よりも旨いです。 余談ですが、酒田の水道水は最上川の水をくみ上げています。 内陸から流れてきた水を浄化して使っていますので 旨くありません。麹室はたくさんの部屋に分かれていました。 吟醸は箱麹を使用しています。


酒母室は昔ながらの蔵を使用していましたが、 地盤沈下で蔵の奥のほうが斜めに傾いていました。 出羽桜では酒母は全て速醸もとです。 香りを嗅いでみましたが、日数が進んでいるものは
醗酵が進んでいるらしく、よい香りがします。


以前みなさんにお知らせしたとおり出羽桜では手のかかる 瓶殺菌を行っています。 ダミー瓶をいれて温度をみながら行っています。 回収した再生瓶は割れてしまう可能性が高いので、
瓶殺菌には使用しないそうです。 瓶殺菌の温度は約65℃前後だそうです。


貯蔵室も吟醸造りが多い蔵らしくしっかりしています。 4年程前に増設した貯蔵庫はかなり大きく建物の中が全て冷えています。 この他にも貨物列車を改造したような貯蔵コンテナが
10台ほどならんでいました。

初孫 蔵見学

初孫の敷地に入ると右手に蔵探訪館、左手に社屋、そして一番奥に 醸造棟が建っています。初孫の醸造棟は長さが約100mほどもある 多きなものです。

お酒に醸すときに一番最初の工程を行うのが原料仕込室です。 600kg(約10俵分)の米を袋状のものに入れ、クレーンでつり上げて 精米済みの原料米を洗米機に入れます。 右の画像が初孫自慢の精米機の画像です。最新式の精米機で 正確に精米することができます。


洗米された米は浸漬といって水に浸すわけですが、 初孫では大きめの浸漬タンクは10個ほど使用しています。 精米歩合が低い米は約13分30秒浸漬し秒単位での浸漬の管理を行っています。


3,4割以上磨いた米の場合は特に浸漬には気を使います。 浸漬用のタンクは中が中空になっていて、 時間がきたら一気に放水できる仕組みのタンクを使用しています。


浸漬が済んだ原料米の蒸しは通常100℃の蒸気で行いますが、 初孫の場合は約120℃の加熱蒸気(スーパーヒーター)を使います。 更け上がりまでは一時間ほどです。仕込みは室温が7℃~13℃の低い環境で行うので、 蒸し上がった米を冷却(放冷)する必要があります。


この時期は冷えた外気を用いて冷却するそうです。
一年に一度寒い時期にしか造りを行わない寒造りの利点の一つに この放冷に外気が利用できるということが挙げられるでしょう。 初孫では夏を除く1年の3/4が醸造期間です。
そのため、冬を除く残りの2期は空調設備を稼働させて行っています。 冷却(放冷)が済んだ米はエアーシューターを用いて 次の工程が行われる部屋にうつります。お酒の母、お酒のもとになる酒母(しゅぼ)を造る酒母室に原料米が 送られてきます。


1000lタンク(通称6石タンク)は一升瓶で約600本くらいの容量が
あるわけですが、これを使って酒母を造ります。全国酒蔵は多数ありますがほとんどの蔵が酒母は速醸もとで造っています。 他の酒母の造り方と比較すると、 どちらかというと簡単に安全にそして短い時間でお酒を醸すことが可能です。


昔の酒蔵では、腐造(お酒の造りに失敗すること)を2年続けると 蔵はつぶれたそうです。 腐造は出したくない、安定した造りをやりたいということで
現在では速醸もとを使用する蔵がほとんどになっています。



山形県内で生産量が最も多い蔵がこの初孫なのですが、 一番の特徴に全量を生もと造りで行っている点があります。生もと造りは乳酸菌を用いて酸を増やします。 できたての酒母は最初は甘酸っぱいです。 酸っぱいのは酸で他の雑菌を殺すためでもあります。 お酒の酵母は酸に強いので死んでしまうことはないそうです。


なぜ、初孫が生もと造りにこだわるのでしょう?初孫があった本町船場町は水や空気、気候が生もと造りに適していたようです。 この十里塚の新工場を建てるときに速醸か生もとか迷ったそうですが
初孫は地方の蔵、時もとに密着した意味での地酒を造りたいとの 願いから在来の生もと造りを選択しました。


生もと造りは手間暇がかかりますが、初孫は普通酒も生もと造りなのです。 すべて生もとを使っているのは全国でも数えるほどしか残っていません。酒母室は3つにわかれているのですが、前半の2週間置く部屋と 後半の2週間におくへやと温度をわけています。 部屋へ酒母を移すときはタンクごと移す方法を用いています。


生もと造りの場合、酒母は速醸にくらべて厳しい環境で育ちます。 醪になったときに非常に醗酵力がおおせいなのが特徴です。 生もとの場合は醗酵力が強く、醪の食い切りが良いので
お酒の後味がすっきりしていて深みが出ます。 6カ月~1年ほど寝かすと味がまろやかになり、秋上がり(ひやおろし ともいいます)しやすいお酒です。
この酒母の生成には24日から1カ月ほど要します。


仕込みは3段仕込みを用いています。 タンクは一升ビンで約12,000~13,000本分あり、一仕込みが 白米で約6トンです。



初孫では年間の稼働日数が約250日で10月から翌年の6月くらいまで 醸造を行っております。 三期醸造を行っているのは全国的にみて杜氏や蔵人の平均年齢が
60歳近いのを考慮してのことです。 10年もたつとあちこちの蔵で醸造が行えなくなる可能性が強いのが 酒造業界の深刻な実情です。


また蔵人も専業農家が多いのです。冬の農作が行えない期間を 酒蔵で働くわけです。いわば季節労働者なわけです。 ところが今は専業農家の数自体が少なくなっているのが現状です。
そこで、三期醸造を行い年間雇用を行う方針をとっております。


冬期以外の春、秋は二重構造のタンクを用いて中を冷たい水が 循環できる仕組みをとっています。 年間雇用を行うことで、酒造りの基礎、昔ながらの在来法の造りを若い造り手に
伝えることも可能になりました。



案内して下さった営業部長の後藤さんの言葉です。「お酒は人間が造るわけではありません。 微生物がものを食べてアルコールを作り出します。 その恩恵を人間が授かっているわけです。」


「生き物を大事に育ててその生き物からお酒を造ってもらうということを 意識することが酒造りには重要です。」

栄光冨士 蔵見学

栄光冨士の最大の特徴はレギュラーから 高級酒まで全部東北生まれの10号酵母で醸しています。 酒母は全品高温糖化です。 杜氏さんは、南部杜氏の熊谷氏が季節になると岩手からやってきます。

蔵の歴史は非常に古く、創業300年を数えるそうです。 言い伝えによりますと加藤清正に由来しているそうです。 いかにも歴史を感じさせられる古めかしい佇まい、 母屋の玄関を入りますと、当時使ったと思われる やりが飾られております。

仕込水は、赤川水系の水道水を使っております。 水道水と言っても、上流に町が無く日本一綺麗な水道の 水と言われているようです。 しかし、今月山で月山ダムが工事中ですのでその後また 昔の井戸水に変えるかもしれないとのことです。

去年、吟醸酒専用のしぼり機械を数千万円で導入しました。 ですから、他の酒の香りなどが混ざることなく 高品質の吟醸酒が生産されると思います。

栄光冨士の立地する大山町は昔、灘、伏見と並ぶ日本3大酒の産地でした。 人口2万の町に50数件の蔵元が軒を連ね、おおいに賑わったそうです。 当時は新潟の業者も列をなして仕入れにきたそうです。 明治の大火でほとんどの蔵が焼失し、第2次大戦で整理統合され 今では、4件の造り酒屋を残すのみとなりました。

全般的に香りが控え目で水のごとく呑める酒を目指しているようです。

上喜元 蔵見学

上喜元は酒田の昔ながらの商店街の中町(なかまち)の近くにあります。 すぐ近くには酒田の港が見渡せる日和山があります。 昔ながらの老舗がならぶ街並みです。

酒田酒造は御蔵と母屋が隣接しています。
母屋は檜造りの素晴らしいものです。


玄関に入ると幅180cmほどある扉があります。とても重い扉で普段は開けっ放しにしているようですが あんなに大きくて立派な一枚板の扉は見たことがありません。


土間に沿うように梁がはってあるのですが長さは20mもあるでしょうか。太さは40cm近くもあり、家屋に使用している木材であのようなものは
5、6軒しか現存していないそうです。


それだけでも驚いてしまいましたが、土間沿いの廊下の板が 60cm幅で25mほども続いています。


それほどの木材をみつけてくるのもたいへんだと思いますが
加工して建築物に使用しているのは当時の大地主だからこそ なのかもしれません。


母屋の奥には土蔵があり、家宝が眠っているとのことです。とは言っても実際に私を案内して下さった高橋さんも見たことはないそうですが。でも廊下に置いてあった木箱には「兜」と書いてあったので
土蔵の中はきっとさぞかし立派なものが入っていることでしょう。



御蔵の造りも古いです。 昔ながらの手造りが生きている蔵です。 杜氏の佐藤正一さん(左の写真の方です)は酒田市の隣の平田町の方で、 造りのときにならないと御蔵にはいらっしゃいません。 佐藤さんは庄内でも指折りの名杜氏です。 10月中旬の時点ではまだ造りは始まっていませんでした。 まず蒸米をするときの和釜を見せて頂きました。 この和釜は普通酒の火入れを行うときも使用するそうです。 和釜の隣にはセイロが置いてありました。


材質を聞いてみたところアルミ製とのことでした。 アルミは溶接などの加工が面倒なので、造るのには手間がかかったことと思います。




この近辺は、初孫を除くほとんどの御蔵は精米は協同精米です。 蔵が集まって協同で精米しています。
初孫は精米機を持っているんですね。となりには洗米機がありました。 随分古い洗米機で、10年20年ではきかないでしょう。





タンク室は2階建てになっていて、幅の広い階段があります。 2階に上がるとタンクの口の部分が見えます。階段の段の角がずいぶん削れています。
これは今のような設備がない昔、仕込んだ醪を桶にいれて 階段を引きずり上げた痕だそうです。


麹室(こうじむろ)も土蔵造りで壁の間には保温のための藁が入っているそうです。 中は殺菌灯で薄暗かったのですが、麹を置く棚も工夫がしてあって
大吟醸などのように麹を重ねて置かないもののために 棚が簡単に取り外しできるように造ってあります。


今は造りをやっていないので麹室の中まで入ることができました。麹室に行く途中ではおばさん達が吟醸粕を袋詰めしていました。
「食べでみれ」(庄内弁です)と言ってくれたので お言葉に甘えてちょっと指につけて食べてみました。普通の粕によりも甘かったです。


粕の中にこりこりしたちょっと固めの
ものが残っていました。これは麹です。 吟醸粕というだけあってとても香りは綺麗です。 帰りがけに二袋ほどわけて頂きました。


酒田酒造の搾りの機械は2つあります。 空気圧を利用して搾る機械と昔ながらの槽(ふね)です。 吟醸などはこの槽をつかって、丁寧に搾ります。
布袋に醪を入れて搾るわけですが、力加減が難しくあまり強く 搾ってしまうとお酒に袋香がついてしまうそうです。



袋吊りと呼ばれる搾り方もあります。 醪を布袋に入れて上から吊るし、滴り落ちたものを集める方法です。とても贅沢な搾り方で、この方法で造られたお酒は雫酒(しずくざけ)とも
呼ばれます。


搾りが終わったお酒を貯蔵しておく冷蔵室はこの搾りを行う所の 奥にあります。斗瓶や一升瓶、四合瓶などが綺麗にならべてあり、 みなさんのお手元に届けられる日をじっと待ち続けています。

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