出羽桜 研修日記 6日目

長いこと(...といってもたかだか一週間ですが)蔵に泊まり込んでいると だんだん曜日や日にちの感覚が無くなってきます。 外の情報は新聞が頼りです。 いよいよ明日のお昼で酒田に帰ります。 丸一日の作業は今日が最後になります。いつもどおり朝の櫂入れを行って洗い物です。


櫂棒やその他のいろいろな道具を洗います。
櫂入れはタンク室で行うのですが、全て同じ仕込みで醸造しているわけでは ないので、同じ櫂棒で櫂入れできないタンクもあります。 そのときは、櫂棒を他に持ってくるか一度洗って熱湯をかけてから
使用したりしています。


さて、今日も蒸米の引き込みを行うのですがなんとなく気付くことがありました。 それは順番が毎回同じなのです。 もと用の米が入っているときと入っていないときなどで若干の違いがありますが、
室(麹米) -> タンク室(初添え掛け米) -> エアーシューターの順番が 変わらないのです。(去年も一週間居たのに気付かなかった ^^;)


夕方に次の日に蒸す米を甑に仕込むのですが、その時に布で仕切りながら 米を階層に分けて仕込んで行きます。 蒸す都合で、下から掛け米 -> 麹米(留め、仲、初添え)
-> もと という具合になっています。 ただ若干順番がかわるときもあるそうです。


たとえば、仲麹が55%精米、初添えが60%精米などのときは
仲麹のほうが上に行く場合もあるそうです。今日はこれと言って特別な作業はありませんでしたが それでもやはりいろいろな発見はあります。


瓶殺菌が終わった大吟醸はトラックで天童本社へ運ばれていきました。 瓶はかなりの数になるのですが、先日お伝えしたとおりキャップにどのような
お酒なのかわかるように記号が打ってあります。


タンクの上の方と下の方で酒質が当然ことなるので 上からとったものをA、下をB、両方混ぜてC それを3つのタンクで袋吊りにして荒・仲・せめとわけているようです。
この分け方は蔵ごとに特徴が出ると思いますが、ほとんどの蔵がこのように 分けていると思います。


今月は県の工業技術センターで鑑評会があります。 これは予選も兼ねていると聞いています。 ここをクリアして東北鑑評会(年に2回)、そして広島で行われる全国鑑評会に
お酒が行きます。

出羽桜 研修日記 5日目

大吟醸の搾りが終わってからというもの、毎晩の酒盛りでへろへろに なってしまっていますが、切り返しと朝の出麹はおきなくてはなりません。 (昨年は大吟醸に関する作業は全て終わっていました)

出麹とは出来上がった麹を室から出して、枯らし場と呼ばれる 乾燥室に運ぶ作業を言います。出羽桜山形工場では天幕を使って(使わないときもあります) 麹を乾燥させています。朝6時の起床で室に行きます。 麹室のとなりに枯らし場があるので麻布に麹米を入れて かついで運びます。

手で均等に広げたあとに同心円の段ができるように米を整えます。 ちょうど日本庭園とかの細かい石(?)のようです。
(うまく説明できなくてすみません)

出羽桜は麹米(もと、初添え、仲添え、留添え)を運ぶときは全て かついで運びます。 私みたいに軟弱な研修生(^^;)は通常よりも少なめの量で運ばせて もらっていますがそれでもかなりきついです。掛け米はどのようにしているかというと、初添えはやはりかついで運びます。

仲添え、留添えはエアーシューターを使います。 エアーシューターが導入されたのはここ5年ほどの話だそうです。 それまでは全て担いでいたのだそうです。

ちなみに出羽桜山形工場で使用している醪のタンクは3t仕込みのタンクですが、 これを1本仕込むのに使う米の量は1500kgほどです。 一度に運ぶわけではないのですが、タンクは順を追ってどんどん仕込んでいく わけですのでこれだけとってもたいへんな作業だと想像できます。

さて今日はいよいよ大吟醸の火入れ作業です。 醪は3/5の袋吊り(4番目の仕込みの大吟醸)で斗瓶ごとにお酒をわけましたが、 そのお酒はまだ澱引きもすんでいないので、3番目の仕込みの大吟醸のものを 火入れ(殺菌)します。殺菌は瓶殺菌です。

一升瓶ごとに荒・仲・せめとあとは斗瓶ごとに わけられたナンバーがキャップに書いてある瓶を何十本も釜に入れて 温めていきます。 ダミーの瓶に水を入れてそれに温度計を差し込み60℃になるまで 注意深く見張ります。

釜で行う場合は温度にムラができる(どうしても外側から暖まる)ので 注意が必要です。60℃まで達するとすこしぬるめのお湯に 馴染ませて、次に水、最終的には氷水につけて急冷します。 この作業も慣れが必要な作業で失敗すると瓶が文字どおり破裂します。

仕込みを担当した方は洗米から浸積など全て手作業で行うために 手がぼろぼろでとても痛々しいです。 そのことを言うと笑いながら「これで痛いとか言っていたら 大吟は仕込めませんよ」と平然と言う蔵人に素直に感動しました。

出羽桜 研修日記 4日目

今日は休みの方が2名いたので人が少なくてたいへんでした。 午前中の櫂入れが終わるとすぐに槽の積み替えです。出羽桜では 押し槽を2槽つかって搾っています。

一度では搾りきれないため積み替えして槽を2槽使って搾ります。 普通酒から本醸造、桜花吟醸、大吟醸も槽で搾るので作業はたいへんです。 もちろん違うお酒を搾るときは全部中を洗って熱湯で殺菌して 行います。粕剥きも行いました。

粕剥きとは搾りが終わった袋から粕を取り出す 作業です。薮田式の搾り機の場合は下に粕を入れる箱を置いて 例の下敷きに取っ手が付いたものでこすっただけで粕が下に落ちます。

押し槽の場合は酒袋を一つ一つ取り出して手でしごいて取り出すので、 とても手間がかかります。 昨日、袋吊りにした大吟醸も槽でさらに搾ります。 このお酒が出羽桜の大吟醸になります。

いつもの年ですとそろそろ指先がひび割れて血塗れになる頃なのですが、 今年はコツを覚えたのかまだ余裕があります。 こまめに手を洗うと良いようです。

出羽桜 研修日記 3日目

今日はいよいよ大吟醸の搾りです。 出羽桜山形工場では今年大吟醸をタンク4本仕込みました。 このタンクは通常の3トンタンクと違って、740kgのタンクを使ってます。 私が見ることができたのは最後の4番目の仕込みのものでした。


この大吟醸が出羽桜の最高級酒の万禮か鑑評会出品酒になります。 今年最後の大吟醸とあって蔵人も真剣そのものです。 特にこの4番目の仕込みを担当した井上さん(私より一つ年上の
28才の方です)は一層神経を使っていました。


いつもの造りであれば私でもお手伝いしているのですが、今回ばかりは 離れてみていました。このタンクのお酒は袋吊りで搾ります。
袋吊りとは醪を酒袋に入れて、それをタンクにつるして滴り落ちた 雫だけを集めてお酒を搾る方法です。


他のメーカーのものは皆さんにも何度かご案内しましたが 袋吊りで搾ったお酒は別名、雫酒とも言ってとてもぜいたくなお酒になります。 万禮は雫酒なんですね。(ここに来るまで知りませんでした
^^;)実際のしぼりは醪を入れた酒袋を木の棒に吊るしていくのですが 小さなタンクに透き間なくびっしりと吊るします。


これは酸化を最小限に抑える(空気に触れる面積を減らすため)です。
吊るす作業はできる限り短時間で行います。


搾りが終わったものは斗瓶に移されます。 これも荒・仲・せめと搾りの段階別に分けられます。 この斗瓶を調合して鑑評会に出品するお酒を造ります。


昨年来たときは大吟醸の造りが終わっていたのですが、今年は貴重な
作業を見ることができました。 私は搾りの最後の行程しか見ていないのですが本当に感動的な瞬間でした。


袋吊りが終わると今度はそれを槽でしぼります。 これが大吟醸になるのだそうです。そういう意味では万禮と大吟醸は 親戚関係にあるのですね。袋吊りが終わった後に担当の井上さんが一人で寂しそうに
それでいて嬉しそうに斗瓶を見ていたのが印象的でした。 明後日はこのお酒を火入れします。


私の日記が遅れたのは昨日の泊まりの晩に井上さんとしぼりたての大吟醸 で飲んだせいです。(^^;) 熟成前の万禮 or 鑑評会出品酒(原酒・生酒)は素晴らしい味で
倒れるまで飲んでしまいました。

出羽桜 研修日記 2日目

去年一週間いたせいもあって、少しは仕事がスムーズにいきました。 昨日は切り返しが7:30にありましたが、かなり苦労した切り返し作業に なりました。麹米のきれが悪いのです。米の表面が乾燥しにくく手でさばいても 金平糖のような小さな塊ができます。切り返し機にも少量ずつしか入れられません。

麹室の床台には麹の山が3つ盛られていましたが、このきれの悪い山は 他の山二つ分以上の時間がかかりました。

最大の原因は米の品種です。この米は八反錦という米なのですが 米が割れやすいそうです。 ということはそれだけ水を吸いやすく水の調整が難しくなります。 昨日の八反錦は若干水を吸いすぎたようで米の表面が乾きにくかったようです。

昨年は切り返しに要する時間はほぼ1時間程度でしたが、今回は2時間半も かかりました。30℃以上の室で2時間半も作業するのはかなりきついです。 ただ、醪よりも麹はごまかしがきかないとのことで、丁寧に根気よく 作業が続けらました。 12時に天幕を張って乾燥させている麹米に手を入れて就寝です。

今日は朝6時に起きてすぐに出麹です。 昨日てこずった八反錦は明日出麹です。今日は12時に手入れをした米を 出麹しました。どんな作業なのか覚えていたのでよかったです。

朝8時に全員集合して今日の一日が始まります。 タンク全体の櫂入れをおこなって、初添えの米を担いで運びます。 出羽桜では麹米と初添えの米をかついで運びます。

仲添え留添えはエアーシューターを使用します。このあと仲添えのエアーシューターの出口で櫂入れです。 最初は楽なので調子に乗っていましたが...忘れていました(^^;) どんどん米が増えてきて重くなってきます。 明日はこのタンクは留添えになるので一番櫂入れ作業がたいへんな タンクになるはずです。

搾りには押し槽をつかっていますが、出羽桜山形工場では昨年お知らせした とおり槽を2つ使って一度搾ってとなりの槽に積み替えてもう一度搾ります。 400枚近く酒袋があるのでたいへんです。 今年は上喜元で薮田も体験したので余計にたいへんに思いました。

明日は大吟醸の搾りがあります。出羽桜山形工場では大吟醸は袋吊りで搾ります。 そのための準備として袋吊り用のタンクを洗浄消毒します。 去年は大吟醸の搾りは全て終わっていたので明日が楽しみです。 明日搾る大吟醸は山形工場、今年最後の大吟醸だそうです。

袋吊りは木の棒に醪をぶらさげてつるすのですが、その木の棒にサランラップを 巻きました。これは上喜元同様、木の香りがつかないようにするための配慮です。 夕方は去年と同じように洗い物をしたりいろいろな雑用をしました。さて、久し振りの出羽桜山形工場だったのですが、去年よりも楽でした。

肉体的には普段の運動不足がたたってきついのですが、(だいたい3日目くらい から身体が馴れてくる)蔵人は全員顔見知りだし、作業が一度は経験している ものがほとんどだったので、少しは醪の経過や去年よりももう少し 突っ込んだ感じで研修できそうです。

今日は9:00から切り返しの予定です。

出羽桜 研修日記 1日目

今年も出羽桜の研修にやってきました。 今日から一週間の予定で造りの勉強です。

実は金曜日から風邪で寝込んでしまい(先月も軽くひいていたのですが) 高熱でうなされていました。 なんとか治ったようなので今日から造りの研修です。到着したのがPM5:00と遅かったのでPM7:30の切り返しから仕事が始まります。

今日は12:00にも切り返しがあります。 明日は大吟醸の上槽があります。(袋吊り)


それでは今年も現場から生のレポートを皆さんにお届けします。 何か質問等ありましたら遠慮なくmail下さい。 杜氏さんや蔵の方に聞いてみます。


P.S. ご注文のmailもいつもどおり受け付けております。

ただレスポンスが若干遅くなりますのでご了承下さい。

お急ぎの場合は、店のほうにFAXかTELでご連絡下さい。

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