お酒の搾り方 藪田(やぶた) 式
醗酵が終わった醪(もろみ)を搾る作業を上槽(じょうそう)といいます。この搾り方にもいろいろな方法があって、一番ポピュラーなのは薮田(やぶた)というアコーディオンカーテンのお化けのような機械で搾る方法です。
薮田は作業がとても楽で、また一度に多く搾ることができるために非常に多くの蔵元が使用しています。
お酒の搾り方 佐瀬(さぜ)式
薮田式の上槽装置が現在のように普及する前は佐瀬式などと呼ばれる槽 (ふね) が使用されていました。
これは木などで作られた浴槽のようなものに醪を袋に入れて並べ、上から蓋をして圧力をかけてしぼるものです。
薮田がポンプで醪を圧送して自動的に作業が終了するのに比べて、ポンプを人間の手で操作しながら数百枚にも及ぶ布袋を並べていくので非常に重労働になります。
また、搾りが終わった後の粕剥きも全て手作業になります。薮田だとリモコンで操作しながら簡単に粕がとれます。
現在はこのタイプの昔の槽はかなり少数になっておりますが、吟醸酒などの高級酒を搾るのには微妙な加減が調整できるために非常に適している搾りです。
最高級の搾り 雫採り(しずくどり)
さて、今回お届けする雫採りは醪を袋に入れるまでは佐瀬式などの槽と同じですが、その袋を小さなタンクなどに吊るします。そして滴り落ちた雫だけを斗瓶(とびん)に集める搾り方をいいます。
雫採りはポンプで圧送するのではなく柄杓などで手で袋に入れて吊るします。ポンプで圧送するのと違い、空気に触れる時間が長い、つまり酸化する危険性がたいへん大きくなりますので、蔵によっては造りの作業を一時中断してまで、全員で短時間で一気に吊るします。
このように圧力をかけずに滴り落ちた雫だけを集めた酒は、吟醸酒など大量生産ができない酒の中でもさらに少数になります。一つのタンクから一升瓶で約1000本程度しか出来ないお酒があるとしたら、雫採りで採れるのは100~150本程度になります。
たいへん貴重な酒で、通常は年に一度広島で行なわれる全国新酒鑑評会などに出品する特別な酒くらいにしか行なわない最高級の搾り方になります。
吊雫原酒について
雫採りで搾った酒は雑味がなく非常に澄んだ味わいで、美しく上品な喉ごしになります。通常、酒は出荷されるときに、割水といって、アルコール度数を少し1~2%ほど落とします。
これは、口当たりをよくすることが目的ですが、裏話をしてしまえばこれによって出荷できる酒の本数が増えるわけですから蔵元としてはありがたいわけです。
今回特別に注文した吊雫原酒は、この割水を一切行なわない原酒です。雫採りによって綺麗に仕上がった上品な酒質とアルコール分の高さによる厚みのある味わいで飲みごたえと美しさが高いレベルだバランスした逸品です。 |
2016 ワインアドヴォケイト 日本酒部門
93ポイント獲得。800銘柄中第5位。